top of page

碌山美術館/ロダニズム


長野県安曇野市にある禄山美術館を訪れた。ここは、近代彫刻の巨匠である荻原守衛(碌山)の美術館で、1958年に長野県の小中学生をはじめとした29万人の手によって建てられた。碌山と関係の深かった戸張孤雁など同時代の作家も展示してあり、日本近代彫刻の流れを振り返ることができる貴重な美術館である。


以前、私は19歳になる年に一度だけここに来たことがある。当時、東京の美術予備校にて浪人をしていたが、そこで知り合った長野出身の友人の実家に遊びに行った際に連れてきてもらった。このノスタルジックな雰囲気に、東京の美術館とは異なる魅力を感じたのを記憶している。最近、ここの学芸員の方と話す機会があり、もう一度訪ねてみたいと思った。


展示は適した作品数で構成されており、碌山の世界を心地よく堪能できる空間となっている。古い時代の作品であるにも関わらず、多くの観客が一点づつ丁寧に鑑賞している姿が印象的であった。

「女」は碌山の代表作であるが、これを制作後に30歳の若さで亡くなったそうだ。当時、社会的に活躍し始めた新しい女性像を意識して表現しているが、螺旋状にねじれながら上昇していくポーズに、その苦悩の様子を感じとることができる。


近年は、ロダニズムの流れを汲む近代具象彫刻家を、ヨーロッパの模倣に過ぎないと軽視する意見もみられるが、私はそうは思わない。所詮、完全にオリジナルの表現などはないし、純粋に日本的なものとは何かという問いは、非常に難しい種類の議論を生む。芸術には様々な考え方があって然るべきだが、私には先人達の挑戦を軽んじることはできない。碌山美術館はこれら日本近代彫刻の含意を思索する貴重な場であると感じている。













碌山美術館

〒399‐8303 長野県安曇野市穂高5095-1





bottom of page