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柳原義達展/三重県立美術館


三重県立美術館にて開催された柳原義達展に関わらせていただき、貴重な経験を得た。

柳原義達を知ったのは高校三年生の頃であった。その頃、美術大学受験の為に住まいのある京都から大阪の美術予備校に通っていたが、その乗換駅である梅田駅の近くに大きな書店があり、そこで彼の著書である「孤独なる彫刻」と出会った。高校生ながらに、彫刻の世界の奥深さや、物事を一生かけて追求することの意味を考えさせられた。


三重県立美術館には柳原義達記念館が併設されており、訪れる度に新たな気付きがある。今回は、没後20年ということで企画展のスペースにも展示を広げた大型展示となっており、改めて彼の仕事を深く味わうことができた。展示は広がりを感じさせるレイアウトで、彼の作品バリエーションや、年代によって変わる作風を自然に確認できる内容になっており、とても好きな空間だったので、会期中何度も足を運んだ。そこで改めて感じたのは、名声を得てからも変わることのない制作に対する姿勢であった。彼の作品からは完成された閉じられた形というよりも、探究した痕跡の集積が感じられた。


今回、幸運にも収蔵庫の中にある作品も見せていただく機会があった。そこには鳩やカラスの石膏原型も多く保存されており、普段は見れないような様々な角度から鑑賞することができた。それらのポーズはバランスの取れた収まりの良いものというよりは、これから次の動作に向かう途中のものであり、そこで表現されていたことは、しなやかな存在感であった。









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