私の作る人物に特定のモデルはいない。それは、誰か個人を表現したいというよりは、もう少し広い範囲での人の存在とは何かを示したいからだ。作品を見た人から誰を作ったのかという質問を受けると、いつも返答がつまらないものになる。
しかし、全ての作品において全くモデルらしき人物がいない訳ではない。ごく稀にだが、モデルと言って良いのか分からない程度ではあるが、実在する人物を意識しながら作ることはある。その場合は、姿形を写すというよりは、その人から受ける印象を私なりに解釈して作品に織り込んでいる。このようなことは、彫刻家に限らず人形作家や絵本作家であったとしても、人をモチーフに創作活動をしていれば自然に起こり得ることだと感じている。
私の場合は、作品の基点の一部にしたことを本人には伝えない。なぜなら、姿形を似せようとして作った訳でないのでそこまで似ていないし、嫌な気持ちにさせてしまうと気の毒だからだ。このことは、あくまで個人的な出来事であり、作品で他者に伝えたい本筋とは関係ないので、私の心の中に留めておくことにしている。
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