以前、兵庫県に用事があった際に姫路城に立ち寄った。
この天守閣は見る位置によって受ける印象が変わる。遠くから見ると、白い漆喰の中に屋根のシルエットが浮かび上がり、その重なり合う姿は優美である。近づくにつれて、それは視界から消えるが、代わりに軒裏が姿を現す。その等間隔で並ぶ垂木と、屋根のアウトラインは美しい構成をしている。
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天守閣の入口に向かう通路を歩いていくと小さな間口が行く手を阻む。身を屈めながら通り抜けるとすぐ正面に石の壁が遮り、通路は左手にある階段に続いていく。これは外敵をすぐに通さない仕掛けだが、ここに空間の境界を感じた。
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室内に入ると印象は一変する。高い塔を支えるために、ひとつひとつの構造が重厚に作られている。外からは意識できなかった天守閣の重圧を感じる。その現代の鉄筋コンリート建築と異なる印象は、月日が経つことによって蓄積された痕跡からも感じ取れる。強い部材と脆いものとで経年劣化に差が現れていることで、それぞれの素材における時間の在り方を考えさせられた。
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姫路城は現存天守閣の中で最も高く、最上階から見える風景は壮観である。屋根の傾斜の効果なのか、高層ビルから見下ろす景色より迫力を感じる。私は高いところがそこまで得意ではないので、早々に降りた。
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天守閣を出て少し歩いた所に、銃を撃つために窓がくり抜かれた塀があった。それらの窓は様々な種類の幾何学形態をしており、役割に反して可愛らしい印象をもっていた。内側から見ると、その斜めに切った造形効果から、実際よりも厚みが感じられた。
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姫路城に隣接する庭園にも立ち寄った。私は鯉が池でじっと佇んでいる姿を見るのが好きだ。フォルムの特徴はユーモラスであるが、その落ち着きから哲学的な印象を受けるのは、私だけだろうか。
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姫路城
〒670-0012 姫路市本町68番地 姫路城三の丸広場北側