top of page

ロダン「パオロとフランチェスカ」/群像について


私は、最近改めて彫刻表現における群像の難しさと、その可能性を感じている。群像の研究を兼ねて、少し前になるがロダンのコレクションが充実している静岡県立美術館を訪れた。初めてここに来たのは私が大学院生の時だった。ロダン館ができてまだ数年後の時期で、大開口の天窓がある広い空間でロダンの作品が見れることに感銘を受けた。柔らかいトップライトの自然光で、高低差のある位置から、距離をとって鑑賞することが出来る貴重な場所である。


ロダンは「地獄の門」に組み込んだ人物像を、後日改めて単体の彫刻としても制作している。その中のひとつである「パオロとフランチェスカ」はダンテの『神曲』に登場する恋人達をモチーフにしている。その絡み合う人体の構成は、決して結ばれることのない愛を表現している。身体のしなやかな動きは、群像ならではのディフォルメが施されていて、この彫刻において重要な要素である腕は解剖学的な観点で見ると多少の違和感を感じたが、それが魅力でもある。

私が現在興味をもつ群像は、「カレーの市民」のような多数のものというよりは、2体か3体で構成されたものである。今まで制作した群像は人物の距離感は比較的離れていたが、より近い構成を試みたい。しかし、このロダンの群像のような濃密な距離感での彫刻表現は難しいと感じている。このプランを進めるのはまだ先になるが、新たな挑戦のひとつにしたい。













静岡県立美術館 ロダン館

〒422-8002 静岡市駿河区谷田53-2





bottom of page