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白川郷/光と影


私は雪景色を見るのが好きである。雪に覆われることにより、固有の形や色が消えて光と影に変化した空間は美しい。今年は暖冬の為、三重県では殆ど雪が積もらなかった。このまま冬が過ぎていくのを残念に感じたので、雪景色を見るために岐阜の白川郷を訪れた。


三重県は西日本を中心とした各地域へ行くのに便利な位置にあり、白川郷までのアクセスも比較的容易である。岐阜の険しい山間部の道を北に向かって車を走らせて行くと、トンネルを抜ける度に雪が深まっていった。3時間程運転したところで、周りを山に囲まれた小さな平地の中に、雪景色の白川郷が現れた。家屋が揃って南北を向いている独特の景色は、屋根に満遍なく日光を当てて雪を溶かす効果を考えてできている。





雪に覆われなかった場所が、光と影に演出されて、まるで主役の佇まいとなっていた。




何気ない物に目がとまるのは、余白の効果だろうか。





ここでは、戦国時代末期ごろから養蚕や和紙作りと共に、建物の床下で鉄砲の火薬の原料となる焔硝が密かに作られていた。「和田家」はその最大規模の名家ということで、建物内部が公開されていた。室内に入ると、天井は低く窓が小さい為、昼間でも薄暗く感じられた。その3階建ての建物は1階が住居として使用され、2、3階で養蚕が営まれていた。合掌造りの建物は厳しい自然環境の中で、それらの産業と住居を兼ね備えた施設として独自に発展したものであった。





1階の囲炉から暖められた空気が建物全体に行き渡るように、2階以上の床板には隙間があり、その煙により柱が黒く燻されていた。触ると硬くコーティングされた質感になっており、防虫や防腐効果があることに納得した。

屋根を内側から見ると、支える柱を釘を使わずに縄で固定している構造がよく理解できる。ここで生活するための様々な工夫が建物に秘められていた。





この様な厳しい自然環境の中だからこそ発展する住居や産業がある。それらの独自性を目の当たりにすると、ものづくりの原点を考えずにはいられない。











白川郷

岐阜県大野郡白川村荻町1086





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